AGAの発症における遺伝の関与率は約八〇パーセントと言われておりこれは身長や体型などの遺伝率と比較しても非常に高い数字です。つまり薄毛になるかならないかの大半は生まれた瞬間に決定づけられていると言っても過言ではありません。この数字を聞くと「努力しても無駄なのか」と無力感に襲われるかもしれませんが視点を変えれば「残りの二〇パーセントは自分の努力次第でコントロールできる」という希望の光が見えてきます。この二〇パーセントを構成するのは生活習慣やストレス頭皮環境などの後天的な環境要因です。遺伝子の世界には「エピジェネティクス」という概念があります。これはDNAの塩基配列そのものは変わらなくても環境や生活習慣によって遺伝子のスイッチがオンになったりオフになったりする仕組みのことです。つまりいくら薄毛になりやすい遺伝子を持っていたとしてもそのスイッチを入れるような生活をしなければ発症を遅らせたり症状を軽度に抑えたりすることは十分に可能なのです。逆に薄毛の遺伝子を持っていなくても不摂生な生活を続けていれば薄毛のスイッチが入りやすくなることもあります。遺伝子のスイッチを入れるトリガーとなるのは睡眠不足や偏った食生活過度なストレス喫煙紫外線ダメージなどです。特に若年層での発症にはこれらの環境要因が大きく関わっています。例えば一卵性双生児の研究において全く同じ遺伝子を持っているにもかかわらず生活環境の違いによって兄はフサフサで弟は薄毛というケースが報告されています。これは遺伝が全てではないことを如実に物語っています。遺伝的リスクが高い人こそこの二〇パーセントの可能性に賭けるべきです。規則正しい生活を送りバランスの良い食事を心がけストレスを溜めないようにする。これらの当たり前のことが遺伝子という強力なプログラムに対抗するための最大の武器となります。八割の遺伝は変えられませんが二割の環境要因を完璧にコントロールすることでトータルのリスクを下げ発症時期を40代50代へと先送りすることができればそれは実質的に遺伝に打ち勝ったと言えるのではないでしょうか。運命は遺伝子だけで決まるものではなく毎日のあなたの選択によって紡がれていくものなのです。