薄毛の原因がウイルスでもホルモンでもなく自分自身の行動にあるケースがあります。それが抜毛症(トリコチロマニア)と呼ばれる精神疾患の一種です。無意識のうちにあるいは衝動的に自分の髪の毛や眉毛まつ毛を引き抜いてしまいその結果として不自然な形の脱毛斑ができてしまう症状です。学童期の子供から思春期の女性に多く見られますが成人の男性や女性でも強いストレスや不安を抱えたときに発症することがあります。抜毛症の特徴は脱毛斑の形がいびつであり円形脱毛症のように綺麗にツルツルに抜けているのではなく引き抜かれた途中の短い髪や切れ毛が不揃いに残っている点です。また利き手側の頭部など手が届きやすい場所に症状が現れやすいのも特徴です。髪を抜くという行為には痛みよりも一種の快感や安らぎ解放感が伴うことが多くイライラや不安緊張退屈を感じたときにそれを解消するための手段として抜毛行為に及んでしまいます。しかし抜いた後には「またやってしまった」という激しい自己嫌悪や罪悪感に襲われそれが新たなストレスとなってまた髪を抜くという負のスパイラルに陥ります。抜毛症は単なる「手癖」ではなく心のSOSサインです。そのため皮膚科的な治療だけでなく精神的なケアが不可欠となります。皮膚科で頭皮の炎症を抑える治療を行いつつ心療内科や精神科でカウンセリングや認知行動療法薬物療法を受けることが推奨されます。本人もやめたいのにやめられないという苦しみを抱えているため周囲が「やめなさい」と叱責したり無理やり手を止めさせたりするのは逆効果です。本人の不安やストレスの原因に寄り添い安心して過ごせる環境を整えることが改善への第一歩となります。長期間抜き続けると毛根がダメージを受けて二度と生えてこなくなる瘢痕性脱毛症に移行するリスクもあるため早期の介入と心のケアが何よりも重要です。帽子を被る手袋をするなど物理的に抜けない状況を作る工夫も一時的には有効ですが根本的な解決には心のケアが欠かせません。
抜毛症は心の叫びが引き起こす自傷的な脱毛とケア