冬場に抜け毛が増えたり、髪のボリュームダウンを感じたりすると、「これは一時的なものだろうか」「春になれば元に戻るのだろうか」と心配になるのは当然のことです。結論から言えば、冬の環境要因による一時的な抜け毛であれば、春になり気候が温暖化し、乾燥が和らぐことで自然に改善する可能性はあります。例えば、前述したように冬の乾燥や寒さによる血行不良が主な原因で抜け毛が増えていた場合、これらの環境ストレスが軽減されれば、頭皮状態も落ち着き、抜け毛が減ってくることが期待できるでしょう。健康な人でも、髪にはヘアサイクル(毛周期)があり、一日に五十本から百本程度の髪は自然に抜け落ちています。動物によっては季節の変わり目に毛が生え変わる「換毛期」がありますが、人間には明確な換毛期はないものの、季節の変わり目に一時的に抜け毛が増えると感じる人もいます。これが冬から春への移行期に当てはまる場合、季節性のものとして心配しすぎる必要はないかもしれません。しかし、注意しなければならないのは、冬の抜け毛や薄毛感が、必ずしも季節的な要因だけでない場合です。男性型脱毛症(AGA)や女性型脱毛症(FAGA/FPHL)といった進行性の脱毛症は、季節に関わらず徐々に進行していきます。たまたま冬にその症状を自覚しただけで、春になっても自然に治るわけではありません。また、過度なストレス、栄養不足、睡眠不足、不適切なヘアケアなどが原因で薄毛が進行している場合も、季節が変わっただけでは根本的な解決には至りません。したがって、「冬の薄毛は春に治る」と安易に考えるのではなく、まずは抜け毛の原因を正しく見極めることが重要です。一時的なものか、それとも何らかの対策が必要な状態なのかを判断するためにも、数ヶ月間様子を見ても改善しない場合は、専門医に相談することを検討しましょう。